新うきさと通信 

三重県の山里から

隠蔽体質の住民協議会も

                          会計監査に「待った」

 松阪市にある43の小学校区に市が主導して自治会や商店会など、主な団体を組織し、作り上げられた住民協議会。その一部で発覚した会計トラブルの監査に「待った」がかかるという異例の事態が起きた。

 金銭はすぐ返還され、大事には至らなかったが、住民協の監事がその時期などを確認するため11月下旬、通帳の閲覧を求めたところ、決定権を持つ役員が「監査は今年度の分だけしてもらえばよい。それ以前のものは開示できない」と、任期の期間をタテに拒否した。

 トラブルが起きたのは平成30年度の末。監事の就任は31年度の4月1日。住民協の役員の任期は単年度ごとだから、という訳だが、それなら、と「役員が確認し、その結果を示してほしい」と求め直しても、「法律上、問題がないのか、市にも訊いてみる」と、即答を避けた。

 このため、監事は「その立場も尊重したい」と、ひとまず引き下がった。12月に入り、役員から市の情報公開請求に沿う形で応じたい、との返答が電話であり、翌日、事務局で「請求書」に署名・捺印し、さらにその翌日、会長と会計が立ち会う中で通帳を閲覧、30年度より以前の記録にも目を通せた。

 問題点は6つ。1つ目は、住民協を構成する住民から閲覧を求められれば、正当な理由がない限り、応じねばならない」と、規約に明記されていたこと。最初からこれに基づいて事務的に処理すれば、困惑はしなくてもすんだはずだ。

 2つ目は、にも拘わらず、すんなり閲覧を認めなかった隠蔽体質だ。役員が恐れたのは、これがメディアを通じて明るみに出れば「住民協がなくなる」からだ。金銭の原資は市民の税金であり、住民協への強い批判が巻き起こるのは必至。そうなれば、市当局も交付金という名の補助金を出せなくなる可能性があるばかりか、住民協の取り消しという最悪の事態にも発展しかねない。事実、条例にはその規定がある。

  3つ目は、したがって、市当局にトラブルを通報しなかったことだ。交付金で運営されているからには、それで済まないはずだが、ある役員は「そんなことをすれば、カネがもらえなくなる」と、本心を明かしている。

 4つ目は、閲覧を単年度に限ると、それ以前の記録は紙で封印するか、毎年、新しい通帳を発行せねばならなくなる。そんな会計のあり方は奇態であり、それこそ世間からあらぬ疑いをかけられるに違いない。

 5つ目は、監事と住民との間に奇妙な格差が生じることだ。規約では閲覧の拒否はできないので、一般住民が望めば通帳をまるごと公開するしかないのに、監事の監査だけは年度ごとに限定するというのは、不自然を超えた不正であり、監事という職務への冒涜ではないか。

 6つ目は、その結果、不正が闇の中に永久に葬むられかねない、という点だ。政治や経済の世界でも、時間ー歴史を遡って不正が追究されることは常にある。姑息な手立てでその場はしのげても、不正は時を経て必ず暴かれる。過去の清算なしに、未来への前進はない。暗い影を引きずると破綻が大口を広げて待ち受けている、という歴史の真実に目を背けてはなるまい。