新うきさと通信 

三重県の山里から

「四日市公害の轍は踏まない」

         風車問題…三重県の環境基本条例で反対を

 

 松阪市の白猪山に建設が計画されている風力発電所は、業者のくにうみアセットマネジメント(東京都、山崎養世社長)の担当社員が9カ月ぶりに地元の柚原町を訪問、自治会長に「続ける」意思を伝えたことで、にわかに緊張が高まっているが、残された環境アセスメントの評価書が提出されれば、そのまま一直線に認可される可能性は排除できない。

 地元では今のところ、自治会の垣根を超え、住民協議会へ「反対」の意思を一本化する動きが出ているが、問題は行政の対応。自治会の反対文書を受け取った竹上真人市長は、議会でも「住民の意見を尊重する」としながらも、法的には制止する手立てがないことも明らかにしており、楽観できない情勢だ。

 こうした中で、問題の決着は法廷の場に持ち込むしかない、との先を見据えた展望が現実味を帯びている。同市長の指摘を待つまでもなく、風車建設そのものは環境アセスメントをパスすれば合法であり、行政側も最終関門である林地開発を許可しないわけにはいかない。このため、最後の防波堤は裁判闘争しかないわけで、住民側の゛本気度゛が問われることになる。

 その場合、切り札は三重県の環境基本条例となろう。環境行政の憲法ともいうべきもので、同県の場合、他府県にない特徴がある。「四日市公害の轍を踏まない」と、多くの犠牲者を出した大気汚染による環境破壊への反省をもとに、再びその過ちを犯さないことを誓っている点だ。このため、住民側としては「風車病の恐れがある」と、事前防止の視点から論陣を張れるわけで、勝訴を勝ち取れる可能性は高い。

 ただ、公害訴訟で問題なのは因果関係の立証だが、これには「その恐れがないことの証明」を迫れるはずで、その準備は早めておく必要があろう。風車による健康被害は全国的に広がっていて、原因の証明に気の遠くなるような時間をかけ、その間に犠牲者が続出するという過去の公害訴訟の愚を犯さないためにも、「疑わしきは罰すべき」と主張できる見識が住民側には求められよう。