新うきさと通信 

三重県の山里から

買い物バスでナゾのドタバタ劇―松阪市のデイサービス

          「廃止」が一転、「続行」へ

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      写真上は憩センターの送迎バス。下は住民協議会の買い物バス
 
 お堅いはずの行政が「廃止」と決めたことがひと月も経たないのに一転、「続行」に逆戻りするというドタバタ劇が松阪市のデイサービスの施設であった。何やらうさん臭い内幕とは…。

 舞台は自然豊かな標高330㍍の山上に佇むうきさ憩センター。昨年7月、市役所の職員3人が訪れ、突然「9月から買い物バスを廃止する」と通告。理由は「交通事故が心配だから」。

 送迎用のこのバスは、同センターの開設以来、20年近く買い物バスにも使われてきた。朝10時から正午までの2時間、利用者にとっては週に1度の遠足気分が味わえる上、コロナ禍で塞ぎ勝ちな気分を晴らすオアシスにもなっていた。

 職員の説明の中に「行楽は構わない」と、矛盾した例外がついていたこともあり、16人の利用者は一斉に反発、9人が「施設から引き揚げる」と、強い決意で抵抗、一部では市の出先機関である市民センターにも廃止の撤回を訴えるなどした。

  ひと月近く経った8月11日、再び市の職員4人が訪ね、運営を委託しているJAみえなかに一転して「続行」を伝えた。厚生労働省の通知をもとに、三重県平成28年8月に策定した買い物を「機能訓練」の一環として扱うという要綱に基づくもので、利用者の切実な声を受け止め、高齢者の支援のあり方を再検討したとみられる。

 これで騒動はひとまず収まったが、「廃止」に至った経緯はヤブの中だ。市側は「(買い物先の)大手スーパーの駐車場に停まっている『松阪市』の文字が書かれた憩センターのバスを目撃した市民から通報があった」ことがきっかけ、としているが、利用者は「不自然だ」と、クビをかしげる

 通報の中身があいまいだし、かりに違法だと指摘されても、当初の利用者の質問に答えたように、「介護保険法に禁止条項はない」と説明すればすむからだ。ナゾは深まるばかりだが、小紙は仮説を立て、取材を進めた。同じように買い物バスを走らせている住民協議会と関わりがあるのではないか。

 このバスは数年前、運転免許を持たない住民のためにスタートしたが、利用者がここへきて減りはじめ、スーパー側が希望する人数(7人と言われる)を安定して確保することが難しくなってきた。スーパー側が人数にこだわるのは、その見返りに運転手の手当やガソリン代などの経費を住民協側に反対給付しているからで、両者は互恵関係にあることなどが分った。

 利用者が減ってきたのは、希望する日に満員で乗れなかったため、憩センターへ¨移籍¨したのが原因とされ、定員割れの日には住民に臨時の利用を求めるなど、人集めに苦慮している。一方、バスは買い物バスだけでなく、災害時などには人や物の運搬に役立てることにしていて、住民協としては、どうしても確保しておきたい事情があるらしい。

              背景に住民協の買い物バス?

 こうした中で、住民協の一部から、同センターの送迎バスの買い物利用を「違法ではないか」と、疑問視する声が上がり、曲折を経て市当局が再検討した結果、正式に「続行」と決まったことが住民協の関係筋の証言で明らかに。「市民からの通報」というのは「ウソ」だったのではないか。やがて「声」の主が住民協の幹部で、行政などの複数の関係者に「違法」を指摘したことが分り、利用者は呆れ返った。

 小紙は8月18日、市役所を訪ね、こうした「事実」を基に「通報」の真偽を質したが、市側は「通報はあった」(西山充代高齢者支援課長)としながらも、次のような質問には反論しなかった。

 ①憩センターと住民協議会は別個の事業主体であり、関わりはない②問題は「民」である住民協の内部で起きており、「官」としての行政は介入すべきでない③住民協は今春から「住民自治協議会」に改称、条例にある住民自治の精神はさらに深化、徹底されていることから、「民」の側で問題の解決を模索するよう助言すべきではなかったか。

 これは、市側が「市民の通報」が事実でなかったことを暗に認めたことになりはしないか、と関係筋は指摘している。