新うきさと通信 

三重県の山里から

買い物バスでナゾのドタバタ劇―松阪市のデイサービス

          「廃止」が一転、「続行」へ

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      写真上は憩センターの送迎バス。下は住民協議会の買い物バス
 
 お堅いはずの行政が「廃止」と決めたことがひと月も経たないのに一転、「続行」に逆戻りするというドタバタ劇が松阪市のデイサービスの施設であった。何やらうさん臭い内幕とは…。

 舞台は自然豊かな標高330㍍の山上に佇むうきさ憩センター。昨年7月、市役所の職員3人が訪れ、突然「9月から買い物バスを廃止する」と通告。理由は「交通事故が心配だから」。

 送迎用のこのバスは、同センターの開設以来、20年近く買い物バスにも使われてきた。朝10時から正午までの2時間、利用者にとっては週に1度の遠足気分が味わえる上、コロナ禍で塞ぎ勝ちな気分を晴らすオアシスにもなっていた。

 職員の説明の中に「行楽は構わない」と、矛盾した例外がついていたこともあり、16人の利用者は一斉に反発、9人が「施設から引き揚げる」と、強い決意で抵抗、一部では市の出先機関である市民センターにも廃止の撤回を訴えるなどした。

  ひと月近く経った8月11日、再び市の職員4人が訪ね、運営を委託しているJAみえなかに一転して「続行」を伝えた。厚生労働省の通知をもとに、三重県平成28年8月に策定した買い物を「機能訓練」の一環として扱うという要綱に基づくもので、利用者の切実な声を受け止め、高齢者の支援のあり方を再検討したとみられる。

 これで騒動はひとまず収まったが、「廃止」に至った経緯はヤブの中だ。市側は「(買い物先の)大手スーパーの駐車場に停まっている『松阪市』の文字が書かれた憩センターのバスを目撃した市民から通報があった」ことがきっかけ、としているが、利用者は「不自然だ」と、クビをかしげる

 通報の中身があいまいだし、かりに違法だと指摘されても、当初の利用者の質問に答えたように、「介護保険法に禁止条項はない」と説明すればすむからだ。ナゾは深まるばかりだが、小紙は仮説を立て、取材を進めた。同じように買い物バスを走らせている住民協議会と関わりがあるのではないか。

 このバスは数年前、運転免許を持たない住民のためにスタートしたが、利用者がここへきて減りはじめ、スーパー側が希望する人数(7人と言われる)を安定して確保することが難しくなってきた。スーパー側が人数にこだわるのは、その見返りに運転手の手当やガソリン代などの経費を住民協側に反対給付しているからで、両者は互恵関係にあることなどが分った。

 利用者が減ってきたのは、希望する日に満員で乗れなかったため、憩センターへ¨移籍¨したのが原因とされ、定員割れの日には住民に臨時の利用を求めるなど、人集めに苦慮している。一方、バスは買い物バスだけでなく、災害時などには人や物の運搬に役立てることにしていて、住民協としては、どうしても確保しておきたい事情があるらしい。

              背景に住民協の買い物バス?

 こうした中で、住民協の一部から、同センターの送迎バスの買い物利用を「違法ではないか」と、疑問視する声が上がり、曲折を経て市当局が再検討した結果、正式に「続行」と決まったことが住民協の関係筋の証言で明らかに。「市民からの通報」というのは「ウソ」だったのではないか。やがて「声」の主が住民協の幹部で、行政などの複数の関係者に「違法」を指摘したことが分り、利用者は呆れ返った。

 小紙は8月18日、市役所を訪ね、こうした「事実」を基に「通報」の真偽を質したが、市側は「通報はあった」(西山充代高齢者支援課長)としながらも、次のような質問には反論しなかった。

 ①憩センターと住民協議会は別個の事業主体であり、関わりはない②問題は「民」である住民協の内部で起きており、「官」としての行政は介入すべきでない③住民協は今春から「住民自治協議会」に改称、条例にある住民自治の精神はさらに深化、徹底されていることから、「民」の側で問題の解決を模索するよう助言すべきではなかったか。

 これは、市側が「市民の通報」が事実でなかったことを暗に認めたことになりはしないか、と関係筋は指摘している。

 

 

 

 

 

 

 

 

      松阪市長から返信

 去る3月25日、3つの問題の解決と、2つの要望の実現を求めて竹上真人松阪市長あてに出した手紙の返信が5月28日に届いた。以下はその全文。公開が大幅に遅れたのは、前号(5 月 18日付)の「謹啓 松阪市長・竹上真人様」へのアクセスが続いていたため。

 

 万緑の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 令和3年3月25日付け「市長への手紙」について、以下のとおり回答します。回答がたいへん遅くなりまして、誠に申し訳ございませんでした。

                 反省し、訂正

 ①広報誌の不配について

 広報松阪の配布につきましては、これまで自治会または自治会に入っていない一部地域団体に業務を委託する方法で、各世帯に配布してまいりました。

 その中で、松阪市としましては自治会の対象地域の全世帯を対象として委託してきたところです。

 大窪様の文書にありますように、松阪市は「もともと、非自治会員には配らないことにしている…」「非自治会員には配れない、とする行政…」と解釈されたことに対しては、誤解を招く伝え方をしてしまい深く反省いたしますとともに訂正させていただきたいと思います。本来、「広報まつさかの配布を自治会にお願いする対象世帯は自治会員、非自治会員に関係なく、全世帯が対象となっていますが、それぞれの自治会運営上のルールに従って配布している。」とご理解いただきたいと思います。

 およその数字ですが、松阪市では非自治会員である世帯であっても少なくとも1,000世帯を超えるお宅へは自治会を通じて配布されているという事実があります。大窪様が住んでおられる柚原町についても非自治会員であっても配布いただく自治会もあれば、そうでない自治会もあるという状況になっています。

 こうした状況の中で自治会から配布していただけない世帯には、松阪市のホームページやスマートフォンアプリを活用した広報まつさかの配信サービスや振興局・市民センター・大手スーパーなどでも広報まつさかを常時設置し、お求めいただければ全ての方にお渡しできる態勢を整えています。

 この4月からは、各地域で住民自治協議会が設立され、今以上に地域と行政が協働してまちづくりを進めていくことになります。広報の配布につきましては、非自治会員世帯へも配布していただけるよう、改めて住民自治協議会へもご協力をお願いしながら、全世帯への配布方法を検討していきたいと考えております。

 なお、今回の件では自治会より配布することで協議済みとのお話を伺っております。

            組織の関与なく、返金されている

 ②宇気郷住民協議会の会計の私的流用

 令和3年4月1日付で松阪市地域づくり組織条例が施行され、住民協議会条例は廃止となっています。新しい条例の中では、地域づくりを行う住民自治協議会への活動支援を市の役割として規定し、その支援を行う団体として、住民自治協議会の認定、認定取り消しについても記述がされています。

 住民自治協議会は、その地域において地域づくりの主体となる自主的な組織として活動を行っていただいていますが、認定取り消しの事案の想定としては、協議会間の統合を念頭にしたものとなっています。今回の件では、会計責任者の個人的な情報の中でその詳細が明瞭でないものの、協議会への返金は行われています。住民協議会が組織として関与したという事実も確認できないことから、認定取り消しの対象事案であるとの認識には至っていません。また、住民自治協議会に関する住民への周知方法については、協議会内で内容を精査した上で、地域において最善の方法にて周知・啓発活動を行っていただければと思います。

              地方自治法に罰則規定ない

 ③法人の柚原町自治会が総会の議事録を捏造

 平成30年10月大窪様より、認可地縁団体である柚原町自治会から平成30年6月5日付で提出された「告示事項変更届出書(代表者の変更)」に添付されている臨時総会議事録について、そのような会合(臨時総会)は実際には、持たれていないのではないかとのご指摘を受けました。同月、当時の担当者は柚原町自治会長及び自治会員と面談し、聴き取り調査を行った上で、正式な回答文書を求め、同年7月に回答がありました。

 回答より、前会長の体調不良による突然の任期途中の辞任や、役員の高齢化など様々な事情を抱えているのは理解できますが、認可地縁団体として認可を受けた以上は、自ら定めた規約を遵守し、活動されるよう、口頭による指導を行いました。

 地方自治法では、この行為に対する罰則規定はなく、また、認可を取り消す理由には至らぬと市は判断させていただき口頭による指導とさせていただきました。

                  警察で捜査中

 ④放置された獣害防護柵 

 防護柵の盗難につきましては、警察に捜査の進捗状況を確認しておりますが、現在も捜査継続中との回答をいただいております。また、耕作放棄地にある防護柵の件では、農水振興課担当者と地域の自治会長とが協議を行っており、一部では耕作を再開しております。

 高齢化により、農業の継続が困難となったり、後継者が不足しているなどの課題もありますが、移住促進などに取り組み、状況の改善を進めていきたいと考えています。

              条例は規制目的ではない

 ⑤草害の条例制定を

 松阪市みんなでまちをきれいにする条例につきましては、環境美化に対して市民のみなさまの自主的な取り組みによる意識の向上等を目的としております。あくまで個人のマナー意識の向上を目的とし特定の行為を禁止しているものであり、規制を目的としているものではございません。そのため当条例につきましては、変更等の予定はしておりません。

 今後も本市にご理解とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。季節柄、くれぐれもご自愛ください。

 令和3年5月25日

                        松阪市長 竹上真人

    謹啓 松阪市長・竹上真人様

       広報誌の不配・議事録の捏造・放置された獣害防護柵……

 

 松阪市の竹上真人市長に手紙を出した。3つの問題の解決と、2つの要望の実現を求めたもので、いずれも市当局が絡んでいる。55日経った5月18日現在、返信はない。内容は次の通り。

 

 市のホームページで、市民が市長に声を届ける制度があるのを知りました。民主市政へのご見識に深く敬意を表し、その上で次の5点についてお訊ねします。

 ①広報誌の不配=柚原町では、自治会に加入していない住民への配布が1昨年4月から打ち切られ、市の出先機関である市民センターなどへ取りに行くことに。明るみに出たきっかけは、1年半後の昨年10月、福祉関係の記事を読もうと、老女が部屋中を探し回っても見つからなかったこと。何十年もの間、配布を続けてきた同センターに見解を質したところ、「他の地区に合わせた」としながらも、実際には自治会からの働きかけがあったことを臭わせた。が、余程の深い事情がない限り、行政が民間の「権利能力なき社団」の意向に従うことは社会通念に反する。(同時に虚言が伝わり、問題がさらにこじれた)。

 昨年11月、老女とともに市の秘書広報課を訪ね、配布の基本方針を訊いたところ、「もともと、非自治会員には配らないことにしている。柚原町の場合は(市の)好意であり、特殊だ」と、突然の方針転換は本来のあるべき姿に復したにすぎない、との認識を示した。これまでは、言わば「お情け」によるもの、と解せられる。

 税金で製作し、市民のものであるはずの広報誌を市民に配るのは行政の「職務」であり、そこに「好意「が発生する余地はない。広報誌は「自治会」に向けたものではなく、「市民」に読まれることを前提にしたものであろう。従って、自治会への加入の有無を配布の基準にするのは論理矛盾であるばかりでなく、重大な差別=人権侵害ではないか。市民センターの入口には「まず燃やせ 人権守る勇気の火」との標識が掲示されている。今回の不配問題は、人権擁護の先兵たるべき行政が自らこの標語を破り捨てる暴挙である。

 ただ、非自治会員への配布は行政職員だけでは不可能。このため、次善の策として非自治会員の代表者に一括して届けるシステムを作り上げている市民センターもある。「市は配らない」と言う本来の方針に反しているのかもしれないが、そこには、何とかして市民に届けようとする「好意」超えた「熱意」が感じられ、胸を打つ。

 前出の担当課は「町のあちこちに置いてある」と言うが、体調が変わりやすい高齢者は歩くことさえ難しい時がある。これを機に、市内全域を総点検し、遺漏なきよう万全の配布体制を確立すべきではないか。市長のインタビュー記事なども、あらゆる市民に読まれてこそ、その意味が全うされるはずであろう。

「内規には配る義務があるとは書かれていない」と同課では釈明している、とも仄聞するが、これが事実なら、配ることを前提としない発刊はナンセンスと言わざるを得ない。

 柚原町では自治会が4月から配ることを決めたが、これで問題が本質的に解決したわけではない。非自治会員には配れない、とする行政の人権感覚こそが前近代的な時代錯誤であることを重ねて指摘したい。

 ※この問題は、他地区の女性市民がブログの動画で発信していますが、大窪が発行している同封のミニコミで知ったことがきっかけです。

 ②宇気郷住民協議会の会計の私的流用=平成30年3月に発覚。風聞はそれ以前からあった。監事就任を機に預金通帳を閲覧した結果、50余万円の使途不明金が判明。返還されたものの、市民の血税を原資とする交付金で運営されている住民協の社会的信認を根本から毀損した。しかも、万事に優先して速やかに市当局へ通報すべきところ、一年半以上も放置されていた。事情を知っていた関係者は「補助金がもらえなくなる」、「住民協が潰れる」など、黙殺を得策とする保身体質を露わにした。

 監事の役割を果たすため、監査報告書を作成(同封)、役員会議で朗読した。事柄の性質上、全会員への周知を強く要請したが、宇気郷市民センターによると、最終的には配布を代議員(十数名)に留めたという。通帳の閲覧を巡って働いた「抑制」に、新たな問題が加わり、火種は残った。

 住民協の条例によると、市長にはその認定と取り消しの権限が与えられているが、本件の場合、後者の対象になり得るのか。いずれにせよ、審議過程の全容を市民に公開すべきではないか。

 ③法人の柚原町自治会が総会の議事録を捏造=平成30年6月、規約に基づき開かねばならない総会を開かず、市当局に捏造した議事録を添え、「開いた」と虚偽報告、会長らの新執行部が法的に無効のままスタートした。 

 前会長の辞任に伴う後任選びに手間取ったという事情は理解できるにしても、臨時総会を開いてでも事後報告すべきであった。担当の地域連携課の動きも鈍い上、ペナルティは一切なく、「注意」だけです処理をすませた。有印公文書偽造は法定刑の対象になるほどの重罪。コトを荒立てたくないという保身・隠蔽の体質が窺える。20余年前、当時の市長から認可された法人であることの重みが官民双方から全く感じられない。

 ④放置された獣害防護柵=数年前に無償で交付されたが、転売の風説と雨ざらしという理解に苦しむ事態が発生。前者は市の職員が現地を調査、あるべき農地から姿を消していたため、警察署に被害届が提出されたが、すでに2年以上も経過しているのに、真相はヤブの中(新聞でも報道)。捜査が打ち切られたのなら、その事実と理由を納税者たる市民に報告すべきではないか。担当課長は「捜査中なので」と、照会に及び腰。

 後者は、耕作が放棄されたのに、防護柵が至るところに雨ざらしになったまま放置されていて、写真を持参して同課長に説明したものの、反応は糠にクギの如きものであった。2年近く経つが実態調査をしたのか。税による公共財であり、当局にはその対応についての説明義務がありはしないか。

 ⑤草害の条例規制を=春から秋までの5カ月間、村は草との闘い。これまで、近隣の空き地などに生えた草は個人が所有者に電話で連絡、有償で刈り取っていたが、世代交代に伴う所有権の移転で名義が変わると、゛交渉゛が難しくなる可能性がある。

 そこで、市の条例による規制が望まれる。タバコのポイ捨てや、犬のフンの始末を義務づけた「町をきれいにする条例」に「草害」が加われば、土地の所有者への説得力が格段に増す。市の担当課を訪ね、打診したが、「現地で解決して」と、反応は冷ややか。

 2㍍以上に及ぶ草の塊は今や、獣害や風水害と並ぶ公害。松阪だけでなく、三重全域から全国に及ぶ普遍的な課題なので、解決への力添えを望みたい。

 

 コロナ対策等で深くご心労のことと拝察しますが、これらの問題も市の健全な発展を阻害する゛障害物゛であり、真っ当な解決へご英断を期待します。ご健勝、専一にお祈り申し上げます。

                                   敬 具

 令和3年3月24日

                               大窪興亜

     「お若いですねぇ」

                少しも嬉しくない

 古民家のトタン屋根を塗り替えた話をかかりつけの40歳前後の医師にしたら、「お若いですねぇ」と感心された。世辞でないことは表情で分る。だが……。

 遠藤周作の「勇気の出る本」(昭和51年、毎日新聞社刊)に、同じようなことが書かれているのに出くわした。いわく「お若く見えますネ、と言われたら、年をとったナ、と言われていると思え」。ただし、アメリカの随筆家の言葉らしく、遠藤さんはあまり好きでないという。

 年下の者が年寄りに向かって

「血色がいいですね」

「お元気そのものですな」

「お若く見えますね」

と言う時は、好意を含んだ発言であるという。

 「そういう時,ニコッとする爺さまと、『あ、これは俺が年をとったなと言う意味だな』と即座に考えるような老人と、我々はどちらを好きになるだろうか。決まっている。嬉しそうに『ニコッ』とする爺さまである。若い者の好意を素直にとり、素直にうけてくれるからだ」…「一方、その言葉を聞くやいなや、『これは、俺が年をとったナという意味だな』と、パッと考えるような老人は頭はまだ鈍っていないかもしれぬが、修養が足りないなと感じさせる。つまり、相応の心のゆたかさ、寛大さにどこか欠けているのだ」と、分析している。

 だが、これは自身がまだ若いころ(50代)の感想で、晩年(享年73)ならどうだったか。いやな顔をするかしないかは、たしかに寛大さに関わるにしても、その直前・直後には「年をとったな」と思うのではないか。否、体験に照らして「思う」と断言できる。そうでないなら、遠藤さんも書いているように、その人は「鈍い」のだ。

 この「鈍さ」は、他のあらゆる領域でもそうであり、それこそ、他人に迷惑をかけても平気でいるという最もイヤな人間の典型となる。「年をとったな」と受け取るのは、ひねくれでもなんでもない。当然で健全な反応なのであり、精神に「老い」がなく、まだまだ「若い」からにほかならない。安っぽい「激励」や「感心」が年配者を傷つけることがあることを若い人は知っておいた方がよい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     市長に届いているのか

        

   重大案件、「管理職止まり」になっているのでは

 このところ、行政の職員と話す機会が増えて疑問に感じることがある。「問題」が起きたときの処理の仕方と、その結果が市民には全く見えない場合があることだ。例えば松阪市役所に関する次の4つのケース。

 いずれも、最終的には市長の決裁や指示が必要とみられるほどの重要案件だが、報告されないまま「中間管理職止まり」になっていることはないのか。もし、あるのなら、深刻な市民への背信となろう。なければ、市長にはその経過と結果を市民に説明する義務があるのではないか。

 ①宇気郷住民協議会の交付金の私的流用=5月27日号でも報じたように、市の交付金の私的流用を監事の大窪興亜(新うきさと通信発行人)が預金通帳を閲覧して突き止めた。その結果は監査報告書としてまとめ、事務局から市の地域連携課長へ6月に送付された。

 流用されたカネは返還されているが、公金は返せば済む、というものではない。まして、今回は発覚して1年半以上も「放置」されていた。事柄の性質上、その「緩み」も含めて全容は市長に報告されねばならない。これは、「道義」からだけではなく、住民協の取り消しという大問題に発展するかもしれないからだ。

 条例によると、市長にはその認可と取り消しの2つの大きな権限が与えられている。どちらの裁定をするにせよ、市長はその経過と結果を含めた全容を市民の前に明らかにする責務がある。監査報告書が同課長へ送付されて、すでに半年が経っている。

 ②非自治会員への広報誌の不配=宇気郷地区市民センターの独断で、自治会に加入していない住民には、広報誌を配られないことに(10月31日付既報)。配布は何十年も続いていたが、昨年4月号から停止していたことが柚原町の85歳の老女が気付いたことで明るみに出た。

 市の基本見解は「もともと非自治会員には配らないようにしている」(岡田久秘書広報課広報広聴監)と言うもので、同町の場合は「好意で配っていた。特殊なケース」(同)と釈明している。市民センターの「独断」は知らされていなかったようだが、「好意」はその「独断」を正当化する根拠を与えることになりはしないか。

 広報誌の発行は市民のためであり、自治会のためではない。しかも、税金で作られているのだから市民のものだ。それを市民に届けるのは行政の責務であろう。「好意」が入り込む余地はない。

 非自治会員の数が多く、市の職員で配れないのは分り切っている。だから、シルバー人材センターやポスティング業者の活用など、次善の策を講ずるべきで、柚原町のように「欲しければ取りに来い」と切って捨てるのは、人権の観点からも許されない。しかも、同町の非会員はわずか数世帯で、歩いて届けられるところが殆ど。老女は「いじめ、差別」と、直配の復活を望んでいる。

 ③消えた獣害防護柵=柚原町の一部で、延べ100㍍以上の獣害防護柵が消えてなくなった。転売のうわさも流れる中、市は実地調査したが真相はヤブの中。警察へ被害届をが出して2年になるが、発表はまだない。関係部署の課長は「すべて警察に任せているから」と、他人事のような姿勢だ。

 ほかにも、耕作をやめたまま放置されている防護柵があちこちに。耕作者と自治会の双方に責任があるが、市はその実態をどこまで調べたのか。これにも、同課長は気乗り薄(昨年秋ごろ、写真を見せた)。税金を預かる立場としての自覚と責任が問われている。

  ④総会議事録の捏造=うきさと地区の自治会(法人)が平成30年6月、開いてもいない総会を「開いた」とする捏造の議事録を地域連携課長へ提出、法的には無効の新人事体制を決めていた。「新うきさと通信」発行人の大窪興亜が情報公開請求などで真相を明らかにしたものだが、「注意」だけで、何のペナルティもない。有印公文書の偽造は法定刑もある重罪。別の自治体によると、法人格の取り消し対象になる場合があるという。事柄の本質が分らないのか、コトを荒立てたくない、という保身本能・隠蔽体質によるものか、発覚後の動きは極めて緩慢。こちらの追及で、しぶしぶ対処したといういきさつがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     市は「好意で配っていた」

        

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                   届けるのは行政の責務…くすぶる柚原町の広報誌不配問題

 自治会に加入していない住民には、広報誌を配らないことを宇気郷地区市民センター(渋谷和彦所長)が昨年2月に決めていたことが明るみに出たことで、「何十年も配られていたのに。いじめ、差別だ」と反発した柚原町の老女(85)と、事実を明かされた新うきさと通信発行人の大窪興亜は先ごろ、松阪市役所を訪ね、見解を質した。

 1時間の話し合いの中で、市側は「もともと自治会に入っていない人には配らないことにしている。柚原町の場合は(市の)好意によるもの」(岡田久秘書広報課広報広聴担当監)と、特殊なケースであることを説明するとともに、非自治会員にはスーパーや公共施設などで手に入るように体制を整えていることを強調した。

 しかし、老女は体調不安があることや、近所づきあいが少なく、他人に持ち帰りを頼みにくいことなどから、以前のような安心できる直配の復活を望んでいる。

 「不配」が表面化してからひと月足らず。直配は難しい情勢だが、問題の本質は次の2点に絞られよう。

 ①市民の税金で作られた広報誌は、市民のもの

 ②市民のものを市民に届けるのは、行政の責務

 この間に「好意」が入り込む余地はない。それは「お情け」であり、先の敗戦と引き換えに得た主権在民の国体の根本理念に反する。

 それでも、「好意」はともかく、何とか届けようとする強い責任感が感じられる実例がある。自治会のない垣鼻町では、市民センターの職員が毎月7、8軒に配っているし、30世帯の非自治会員を擁する松尾市民センターでは、その代表者に一括して届ければ、もれなく行き渡るシステムが出来上がっている。

 しかし、市の見解をそのまま敷衍(ふえん)すれば、こうした出先機関の努力は「しなくてもよい」ことになりかねず、今回の宇気郷地区市民センターの方針転換をも正当化する根拠を与えるのではないか、との見方が地元の一部で出ている。

 柚原町の場合、問題がこじれたのは、善後策を用意しないまま、「配布停止」で切って捨てたことにある。渋谷所長は、自治会の意向を仄めかしているが、それが事実なら行政の裁量権への介入であると同時に、受け容れる側の姿勢も批判されよう。

 今回の騒動は、高齢化が急激に進む中で、広報誌の配布に看過できない課題が潜んでいることを浮き彫りにした。これを機に、官民協同で対応策を模索すべきではないか。シルバー人材センターやポスティング業者の活用など、方途はある。ただ、問題解決のカギは市民への「責務」を負う行政側が握っていることだけは、はっきりさせておくべきであろう。

 

 

   「自治会員でなければ配れない」

            松阪市の広報誌など

 

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 通称「うきさと」と呼ばれる松阪市の柚原・後山・飯福田・与原の⒋町の一部で市の広報誌などが昨年4月から配布されなくなっていることが分った。

 市が発行する広報誌は毎月、市の出先機関の市民センターを通じて各自治会に届けられ、組の役員が公民館だよりと合わせて会員に配っているが、自治会に加入していない住民には、市の出先機関である宇気郷市民センターの用務員が届けていた。しかし、昨年3月末で打ち切られ、希望者は同センターまで取りに行くことに。

 事実が明るみに出たのは、医療や福祉の記事を読みたくなった80代の老女が部屋中を探しても見つからなかったことを、新うきさと通信発行人の大窪興亜に明かしたのがきっかけ。

 配布をやめた理由について同センターは、別項(平成31年2月28日付)のように「他の地域との関連」としているだけで、詳しい理由には触れていない。このため「配布できなくなった」のではなく、「配布できるのにやめた」のではないか、との推測も出ている。取りに来ているのは1人だけ。ある老女は「これまで配っていた人がいまもいるのに」と、クビをかしげている。

 自治会の未加入者への配布の法的な拘束力については議論が分れているが、「務めなので」と、何年か前の同センターの元所長が広報誌を手渡してくれたことがある、との証言もある。これは、広報誌が自治会員に向けたものでなく、「市民」に行政の施策を周知するためのものであることを示している。

 未加入者は34世帯中の5世帯・6人だが、5人が後期高齢者で、一部には「病気で取りに行けなくなったら…」とのタメ息も。会員には関係のない問題とも言えるが、聞き知った住民は「何とかならないか」と、成り行きに関心を寄せている。

   

          広報松阪・公民館だよりの配布について

 

 早春の候、皆様にはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。日頃より、当公民館活動におけるご支援を多方面に賜り、誠にありがとうございます。 

 さて、今回表題の広報松阪・公民館だよりの配布の件でございますが、3月号までは市民センターが自治会未加入者様のご自宅へ直接配布しておりましたが、他地域との関連もあり申し訳ありませんが、配布できなくなりました。4月号からは直接市民センターへお越しください。

 何卒、ご理解の程よろしくお願いいたします。

 

                           (原文のまま